3月の市民交流事業は、つながれっとシアター&交流会。映画『エリン・ブロコビッチ』の上映の後、参加された方々と交流会をおこない、映画の感想や意見交換をしました。当日は寒さ厳しい日でしたが、10名のご参加がありました。
この作品は、実在のアメリカ人女性エリン・ブロコビッチの活躍を描いたサクセス・ストーリーです。
彼女は2度の離婚歴があり、3人の子持ちのシングルマザー。無職で貯金残高16ドルという崖っぷちの状態から、法律事務所に職を得て、長期にわたる調査を重ねて大企業の環境汚染を暴き出し、集団訴訟に勝利するという大展開が描かれています。
この映画は130分と長めなのですが、毎日の家事・育児の大変さにめげずに、粘り強く現地に通い、タフな交渉を重ねるエリンを観ているうちに、ぐっと引き込まれていきました。自分のボスだけでなく、ほかの男性弁護士に対してもひるむことなく、自分の意見を主張して、一歩も引かない態度。弁護士事務所というお堅い職場にあっても、自分に似合うからと、露出度の高い服装を改めようとはしない、超マイペースなエリン。彼女の魅力は、その押しの強さだけではなくて、チャーミングな笑顔と人懐っこさ。健康被害に悩む一人ひとりの話に真剣に耳を傾けて、皆から厚い信頼を得る誠実さと言えるでしょう。
無学だ、無職だ、離婚歴があるなど、自分の境遇を一切恥じることなく、道を切り開いていくエリンの姿は観ていてとても爽快です。大事なことは、終わったことではなく、これからどうするか。自分を信じて進んでいくことだ、と励まされる思いがしました。
上映後の交流会には、ほとんどの方がご参加くださいました。紅茶をいただきながら、1つの輪になって映画の感想を分かち合います。法律事務所に押し掛けて自分を雇うように迫る、エリンの押しの強さや、何度も昇給を要求する姿に「さすが、自己主張の強いアメリカ!」と文化面からの感想。恋人ジョージが家事や育児を引き受けて、エリンの活躍を支えたところは、
「舞台が日本ならおそらく、NHKの『プロジェクトX』のように男性の活躍の陰にある内助の功、といったストーリーになるのでは」といった意見。そのほか文化の違いや、男女の性別役割にとらわれない生き方への清々しさなどが語られました。
そのほかマスメディアの与える影響など、話題は展開していき、30分間があっという間でした。
上映会では毎回感じることですが、やはり映画を観た同士でおしゃべりするひとときを持つのは楽しいものですね。お話を聴きながら、同感したり、自分にはなかった新たな視点を得たり。いろいろな観方を知ると、映画の味わいも深まる気がします。「男女共同参画の視点で映画をみる!」これからも、こうした機会が増えていくことを願っています。 (塚田 恵)
2014年2月21日(金)午後3時〜6時
2月の市民交流事業は、公益財団法人21世紀職業財団との共催で「働く女性の交流会」を開催しました。講演、パネルディスカッションのほか、参加者の交流会と盛りだくさんの内容。約90人の参加があり、3時間にわたるプログラムは大変盛況でした。
第1部は、「トップが語る」―女性の活躍推進に向けて!ダイレクトメッセージ―をテーマに、松浦信男さん(万協製薬株式会社代表取締役)と岩田喜美枝さん(公益財団法人21世紀職業財団会長)、お二人の対談で進められました。万協製薬は三重県多気郡にある社員数約120名の会社です。社員の男女比が五分五分。それだけでなく管理職数についても、男女比ほぼ五分五分であるという点に驚かされます。企業理念として「従業員の心物両面の向上」を挙げ、松浦さんは「社員が離職しないですむためのしくみ」を考え続けているそうです。それを具体化して、多様な工夫が制度化されています。3年間の育児休暇に加えて、子どもが小学生就学までの間は時短勤務が選択できること、男性の育休取得も多くあり、育休中の男性社員に育児体験を報告してもらう機会を設けるなど、大変ユニークです。それらの工夫の結果、出産・育児を理由に退職する女性社員は皆無になったそうです。中でも興味深いのは、社内に、年代が異なる社員数人で構成される疑似家族のようなグループを設け、気軽に相談できる工夫をしている点です。このようなきめ細かな配慮のほとんどは、専務として会社を支えながら、3人の子どもを育ててきたパートナー(妻)のアイディアだそうです。万協製薬のように、女性に対して選択肢を提供する企業がもっと評価を得るようになれば、そして、そのような企業が社会のスタンダードとなれば、きっと社会全体が大きな変化を遂げるはずです。
続いて第2部は、パネルディスカッション「活躍する女性たち」―次代の女性たちへ!応援メッセージーをテーマに、パネリストとして、東海東京証券株式会社執行役員の北川尚子さん、株式会社ジェイアール東海高島屋常務取締役営業本部長の宇都宮優子さん、岩田喜美枝さん(コーディネーター兼務)がご登壇されました。三人に共通するのは、「企業経営の主体となる執行役員の経験がある女性」という点です。
冒頭の自己紹介に続いて、役員という立場での経験、それまでの立場との違い、女性役員として会社に貢献した点などを中心にお話いただきました。共通したことは、ロールモデルとなる先輩の不在です。つまり、自分のキャリアプランにとって参考となるような、執行役員となった女性の先輩がほとんどおらず、将来が計画しづらい点でした。そのような経験をされた方々の「自分が後輩の女性にとって役に立ちたい」思いが印象に残りました。女性が執行役員であることのメリットとしては、「初めての女性の執行役員」ということで、メディアから取材を受ける機会が増える点、経済界などとのネットワークが拡がること、女性ならではの感性やコミュニケーション能力が活かせることが挙げられました。今後も女性の執行役員が活躍することで、新しく多様な企業活動が展開し、企業イメージ・価値はますます向上するでしょう。女性の執行役員の存在は、企業のメリットとなることは明白です。
第3部では、「ここから拡がるネットワーク」―中部発信!つながるわたしたち―参加者一人ひとりが主役となる交流会です。飲み物とフルーツケーキを手に、テーブルごとのグループで自己紹介の後、それぞれの経験や関心ごとなどを分かち合っていきます。参加された方々は、学生、育児をしながら働く世代、管理職として活躍される方、資格を活かして仕事をしている方、退職を控えた方など、年代も立場もさまざまです。また、働く場所もこれまでのキャリアも多様な女性たちが集まっていることから、名刺交換と交流の輪があちこちで広がっていきました。今日できたネットワークから、新たな活動が広がっていくことを強く願いました。
今回のプログラムは、女性社員の活躍が当然と考える松浦さんのお話や、女性の執行役員である方々の体験談など得るものが多く、加えて、参加者のネットワークづくりに対する熱意が強く伝わる機会となりました。身近なロールモデルに恵まれない方も、このプログラムで大いに励まされたのではないでしょうか。
女性の社会進出度が先進国で最下位の日本において、女性が活躍できる社会をつくるには多くの課題があります。さまざまな課題を乗り越え、社会を変えるためには、私たち一人ひとりの取組みが重要です。今日のプログラムがそのきっかけになるはず…そう確信しました。 (塚田 恵)
「男女共同参画落語創作・口演家」のとして、男女共同参に関するテーマを落語でわかりやすく、そして楽しく伝えている千金亭 値千金さん。
つながれっとNAGOYAで、今回で2回目となる「落語口演会&ワークショップ」が開催された。
千金亭 値千金さんは、もともと埼玉県鶴ヶ島市の職員。公民館に在職中は、自然環境、家庭教育、舞台芸能、地域福祉、まちづくりの講座から高齢者学級まで事業企画などを手がけてきた。さらに私生活で結婚(事実婚・別姓)したことで、男女共同参画への関心が高まったという異色の口演家だ。
この日は、落語の演芸場で流れる賑やかなお囃子とともに、参加者の方々が待つ、交流ラウンジに登場した。今回のお題は『めでぃあ・りてらしー』。
「男はこうあるべき」「女はこうでならなければならない」、あるは「男は指導的であるべき」「女は補助的で当たり前」というニュアンスの発言や映像が、いかにマスコミ等で頻繁に流されているか。しかもそれを視聴者である私たちは、自然と意識のなかに刷り込まれているか、その事実を楽しい笑い話で披露した。
メディアが描くのは、「ある男・女」であり、「あるべき男・女」ではないのであり、私たちにはそれを読み解く力が必要なのだと教えてくれる千金亭 値千金さん。
参加者の方々は、笑いながら、噺に引き込まれていくうちに私たちはいかにこうした無言の強制力に支配されて生きているかを知ることになった。
千金亭 値千金さんのねらいは、こうした事実を認識することの大切さと、本来、男性にも女性にも、すべての活動に共同に(=同等の立場で)参画する、あるいは計画に加わるチャンスと権利があることを伝えることだ。
その後、参加者の方々、二人一組になり、日ごろから自分自身が感じている苦しさ、つまり私たちが暮らしているこの社会が、いかに男女共同参画ができていないか、それを改善するにはどうすれば良いかなどを互いに語り合った。
また、千金亭 値千金さん、90年代の平松愛理のヒット曲「部屋とYシャツと私」を、「私と部屋とYシャツ」と改題して、替え歌で披露。作詞は、本名阪本真一さん。千金亭 値千金さんの本名だ。その内容を元歌と比べてみると…
?「お願いがあるのよ あなたの苗字になる私」→「例外があるのよ あなたの苗字にはならないわ」
?「最初に相談してね 私はあなたとなら どこでも大丈夫」→「最後に相談してね 私の行き先は 私が決めます」
などといった具合に、ユーモアに富んだ歌詞に変えて、熱唱。歌の上手さもさることながら、男女参画がすすんでいる社会での男女の在り様を鋭く描いていた。
会場を大いに沸かせた後で、満面の笑顔の参加者の方々からは、「このような楽しい企画をもっと行ってほしい」といった参加者の声が多かった。
「男女参画がすすんでいる社会では必要のない話」という千金亭 値千金さん言葉には、今の日本社会が抱えている大きな問題を感じさせてくれた。(中村 設子)
安定した市民サービスを受けるためにはどういう評価が必要か。あるいは自分たちが主体的に行っている活動(NPOの運営など)をする場合、より良い結果を生みだし、効果を継続的に波及させるために考えなければならないことは何なのか。
その参考になったのが、12月7日と8日にお二人の講師によって行われた「社会に活かす『評価の実践』」であった。
私自身、実はこの講義を受けるまで、「評価士」という専門家がいることを知らなかった。この資格を認定しているのは、2001年に発足した「日本評価士学会」だ。
自治体の事業や諸団体の活動などについて、評価を行うことで、世の中をより良く改善することを目指す専門家として、多くの地方自治体などで活用されている。
行政の要求と、市民がやっていきたい活動という、二つのベクトルを両立させ、ここに関わる人たちの欲求をすべて満たすのは難しいが、市民向けに、多くの市民が納得できるような評価を行うことの難しさもわかった。
まず効果は予測でしかないこと。限られた予算の中で、ある事業を実地したほうがよいとなった際、必要性の後に効率性、有効性の議論を段階的にやったほうがよいが良いという指摘は新鮮であった。
事業の必要性と有効性を行政にぶつけるのも大事であるが、公的機関からの業務委託で事業を行っている場合など、役所や公的機関が聞き入れてくれそうな要素を入れなければ、話が前に進んでいかない。
行政からの情報をきちんと取らなければならないこと、自分たちに情報ソースがない場合は、どのようにして必要な情報を集めるのかを十分に検討する必要がある。
いかに関心のある観点を盛り込んでいくか、やりたいことを100項目も盛り込む評価ではなく、評価によって市民の議論がわきあがる方向性に持っていくのが賢い方法なのだ。
何をどうやったらいいか、そうした視点を行政に提示することで、市民の意識はもちろん、市民の行動や行政の政策の方向性が変わっていく可能性があるのだ。
「数式で出てくる評価」ではないものを思考していくこと、つまり「こういう視点があったらよかったのではないか」というようなヒントがあれば、社会を動かせる可能性があるといえる。
これだけ多くの市民がいる限り、みんなが同じ価値観ではないのは当然だ。だからこそ、「自分たちはこういう価値観でやるのだ」ということを公言することが重要だといえる。
文章化する場合、このように価値観をいちばん先に示し(=欧米のように結論を先に 次に理由を書く)、どういう立場で評価をするのかというのを明確にすることである。
参加者のなかには、「三重県志摩市のクオリティのアップさせるために、観光について評価の視点を学びたい」、「学生時代に地方自治(公営交通)を学び、現在の自治体の政策に危機感を抱いている」、さらには「今、子育て中だが、これからの社会のあり方を考えたい」といった目的意識が高い方々が多く、講師を交えて活発な意見交換が行われた。
アカウンタビリティ=説明責任という言葉をよく耳にする昨今。特に民主党政権時代には、連日、マスコミで報道された事業仕分けの際に使われた。
だがよく考えてみると、評価という方法は、私たちの税金がどのように使われているのか、あるいは自分たちが現在行っている活動に、もしかして公的資金の援助が必要でないかと考えたときに、有効な判断基準や思考ツールとなりえるのではないかと思う。
◆中村設子◆
【朗 読】 伊藤静香 アサーティブ・サポーター
【ファシリテーター】 中村奈津子 ワールドカフェ・ファシリテーター
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自由にネットワークづくりができるカフェのような雰囲気の中で、オープンに互いの思いや知識を交換しあい、深め合う「ワールドカフェ」。今回は絵本『パパと怒り鬼』を手がかりにDVについて考える企画だ。
まず、伊藤静香さんによる朗読からはじまり、およそ40分間、参加者のみなさんは静かに耳を傾けた。この絵本はノルウェー文化省・協会省の「児童文学賞」受賞した作品。実話に基づいて創作されたもので、両親と暮らす少年ボイが主人公。父親がDVの加害者であり、常に夫の機嫌をとりながら暴力に怯える母親の姿や、幼い子の戸惑いや恐怖心がリアルに描かれている。絵本にこめられた作者の気持ちをいっしょになって感じ取った後、3〜4人のグループに別れ、中村奈津子さんがファシリテーターとなって「ワールドカフェ」へと進んだ。
第一ラウンドのテーマは「あなたは『パパと怒り鬼』のストリーにどんなことを考えたか」。テーブルの上に広げた白い模造紙に参加者のみなさんひとりひとりが自分の思いを書き、同じグループのメンバーに伝えた。
「少年ボイの恐怖を感じて、胸が痛んだ」
「母親が守りたいものは何?ボイなのか、それとも生活なのかがわからない」
「現在、大きな社会問題となっているDVの問題を、道徳的な言葉で伝えるのではなく、絵本でなら、自然にわかりやすく伝えられる」といった感想が目立った。
約20分間話し合ったあと、第二ラウンドへ。半分のメンバーが他のテーブルと入れ替わった。次のテーマは「『人は変われます。変わろうと思えば(=この絵本の帯に書かれている、女優・東ちづるさんのメッセージ)』にあなたは何を思いますか」。
「人が変わるためには、まず気づきが必要」
「自己肯定感をいかに保てるか。それがDVの被害者にならないためには絶対に大切なこと」
「DV被害者=ボイの母親の心理がわからない。どうして加害者の夫から逃げ出さないのだろうか」
「この本はDV問題を何とかしようという目的が強すぎて、子どもたちにはわかりづらいかも・・・」といった活発な意見が飛び交った。
今回は重いテーマを取り上げたが、DVをご自身が辛い体験として抱えてきた方や、早急に解決しなければならない社会的な問題として捉えている方、そして日ごろから子どもたちに絵本の読み聞かせを行っている方などが参加し、さまざまな立場から意見を交換することで、今の社会が取り組むべき問題点を整理するなど、有意義な話し合いの場となった。(中村設子)
<朗読した絵本について>
『パパと怒り鬼』 作/グロー・ダーレ、絵/スヴァイン・ニーフース
ひさかたチャイルド/2011年 全国学校図書館協議会選定図書、日本図書館協会選定図書
ノルウェー文化省・協会省「児童文学賞」受賞作品
平等はビジネス向上のカギ
女性エンパワーメント原則 WEPs(Women's Empowerment Principles)で、女性の活躍を推進!
■講師
・大西祥世(グローバル・コンパクト研究センター研究員、法政大学兼任講師)
■ゲスト
・加藤千恵(株式会社エステム:WEPs署名企業)
■日時:2013年10月11日(金) 講演会/14:30〜16:00 交流会/16:15〜17:15
■会場:名古屋市男女平等参画推進センター 交流ラウンジ
■後援:UN Women日本国内委員会、公益財団法人21世紀職業財団
講演会
★基調講演
講師の大西祥世さんは、WEPsの重要性をとらえつつWEPsが抱える課題に正面から取組んでこられました。また、2009年以降毎年3月に国連で開催されるWEPs年次会合に参加されており、WEPsと「女性の活躍」との関わりについて、世界全体そして国内の状況をふまえ多方面から語ってくださいました。
・WEPsとは?
国連では、職場、市場、地域におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの一層の推進をめざして、国連グローバル・コンパクト(UNGC)事務所とジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)が、2010年に「女性のエンパワーメント原則(Women's Empowerment Principles:WEPs)を共同で作成しています。講演会では、このWEPsをキーワードに、「女性の活躍は、人権にもビジネスにもメリットがある」という視点で進められました。
人権保障と平等推進の担い手として、近年は政府だけでなく企業の役割が重視され、CSRに関する国際的・自主的な取組みが整備されています。こうした背景の下、2000年に国連グローバル・コンパクト(UNGC)が「GC10原則」を作成したことが出発点となり、WEPsの作成へとつながりました。
WEPsは、次の7原則で成り立っており、WEPsへは「企業が署名する」という形式で参加します。
(1)トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進
(2)機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃
(3)健康、安全、暴力の撤廃
(4)教育と研修
(5)事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動
(6)地域におけるリーダーシップと参画
(7)透明性、成果の測定、報告
<http://www.gender.go.jp/international/int_un_kaigi/int_weps/index.html>
2013年10月1日現在、608社のCEOが(うち、日本企業は203社)署名しています。
・WEPsの意義と効果
WEPsに署名することにより、?企業の取組みの「見える化」が可能となり、?雇用の適正化をもたらし、?女性の力を生かして業績アップへつなげるという好事例がみられるようになってきました。日本企業の取組みとしては、?トップのリーダーシップによる推進、?ワーク・ライフ・バランスの促進、?データの公表とポジティブ・アクションの運用、?NGOやスポーツチームへの支援といった特徴がみられます。一方、?トップは表明するが、なかなか実行につながらない、?男性の育児・介護休業取得の実態が明確でない、?女性のエンパワーメントと通じたビジネスの発展およびコミュニティへの貢献という視点がみられない、?PDCAサイクルの透明性、公開性が不十分といった課題もみられるとのことでした。
さて、女性のエンパワーメントの視点から平等を進めることは、企業にとってどのような影響をもたらすのでしょうか。企業の取組みの良いところを国際的な基準によって評価でき、これからの「伸びしろ」を見つけることができる、そして、サプライチェーン、地域、NGOといったステークホルダーと連携できることと、大西さんは明言されました。WEPsへの署名によって、企業が発展していくプロセスに注目が集まっています。
★ゲスト・トーク
ゲストとしてお迎えしたのは、株式会社エステムの加藤千恵さんです。加藤さんは、自社のWEPs署名経緯、影響と効果、今後の課題について語ってくださいました。
株式会社エステム URL http://www.stem.co.jp/company/profile.html
・署名への経緯と影響
名古屋市南区に本社がある株式会社エステムは、水処理施設の維持管理・設計・施工監理およびコンサルタント業務・環境測定に関する業務およびコンサルタント業務等を事業として行っている会社です。420名の従業員のうち、87名が女性(20%)です。代表取締役会長の鋤柄修氏は、中小企業家同友会全国協議会(中同協)会長を務め、「企業は社会の公器です。利益は手段であり、目的であってはなりません」(「同友Aichi」2011年12月1日号掲載:http://www.douyukai.net/50th/?page_id=348)と企業経営者としての姿勢を示される方です。
株式会社エステムでは、WEPsについて内閣府からの紹介を受け、WEPsという活動自体が企業活動に刺激になること、そして署名には費用がかからなかったことも動機の一つとなり、署名されたとのこと。現段階では、特に効果を感じていないとのことですが…。今後の課題は、明確に分析されていました。
まず、第一の課題は、女性の職域拡大とのこと。この課題は、業務の拡大につながる可能性があるとのことです。第二の課題は、従業員の意識改革。無意識に慣例にしばられ、性別役割分担の意識をもってしまっていることに対して、10年から20年先をみて考え行動する意識を醸成することが重要…と語ってくださいました。
交流会
ゲストの加藤さんのお話を受け、株式会社エステムの事例へ大西さんからのコメントでスタートしました。大西さんは、株式会社エステムにおけるWEPsの取組みへ、次のような示唆をくださいました。
?企業文化として根付いている。
?男女関係なく配置している。
?インクルージョンが進んでいる。
?企業の展望が考えられている。
?新しいビジネスへ取り組もうとしている。
?企業文化を変える兆しがある。
その後、参加者お一人おひとりからのコメントも続き、WEPsをキーワードにして「人権、平等」と「女性の活躍推進」の接点を見つめる時間を過ごすことができました。
とはいえ、WEPsの取組みは、日本国内、そして、中部地域においても、まだまだ伝わりきれていない状況です。企業の発展が企業を構成する従業員一人ひとりの発展へとつながるWEPs!平等はビジネス向上のカギ―まず第一歩は、WEPsへの署名からはじまる…と確信しました。 ■渋谷典子■
]]>講演会
★第一部:日高橘子さんからのメッセージ
東日本大震災で被災した陸前高田市に一年間、名古屋市から長期派遣職員(保健師)として派遣された日高橘子さんが、一日一日の体験を振り返り、「女性の視点」でとらえる支援と復興のあり方を語りました。
8月の市民交流事業は、つながれっとシアター『森の中の淑女たち』の映画上映と交流会をおこないました。本編上映の後には、今年1月の渋谷アップリンクの上映会での、上野千鶴子さんのシアタートークも合わせて映像でご紹介しました。当日は昨夜からの大雨。あいにくのお天気でしたが、約90名のご参加がありました。
この作品は、1990年にシンシア・スコットが51歳で初めて監督として製作したものです。舞台はカナダ、ケベックの森。ストーリーは、8人の女性がバスの故障により、森のなかで足止めを食うところから始まります。人里離れた森を歩き出す姿には悲壮感はなく、平均76歳の淑女たちは、上野千鶴子さんの言葉を借りると3泊4日の「女子会サマーキャンプ」を楽しそうに過ごすのです。驚いたことに、20代のバス運転手を除いて7人は演技経験がない女性ばかり。監督は、大まかなシナリオだけで、細部を決めずに映画製作をしたそうです。映画ではそれぞれが本名を用いていて、自分の人生をお互いに語り合います。
息子をなくした悲しみ、病気のあとの不安など、誰の身にも起こりそうな経験が語られる一方で、修道女としての人生や、60代でレズビアンをカムアウトしたこと、といったそれぞれの特別な経験も、静かな口調で明らかにされていきます。映画のストーリー自体に大きな展開はなく、穏やかで坦々とした調子なのですが、一人ひとりの語りに耳を傾けていくうちにぐっと引き込まれていきます。語りの合間には、あどけない子ども時代から中年の頃までの個々人のポートレートが数枚、無音で映し出されます。その静かな間(ま)は、女性の人生の一つひとつの重みを象徴しているようでした。
休憩後、上野千鶴子さんのシアタートークの上映が始まりました。登場人物の誰に一番共感するか、自分はどんな年寄りになりそうか、といった問いかけ、男性ばかりのグループならどう展開するだろうか、男女混合ならどうかなどと、自分にはなかった多様な視点を提示され、イメージが膨らみます。また、観る側が何歳の時に観るかで、印象や感想が変わる可能性を含んだ映画だろうという言葉にもうなずけます。10年後、20年後の自分がどう感じるか。それを確かめるのも今後の楽しみにできて、どの年代の方にも何度でも楽しめる映画です。
交流会には30名を超える方々がご参加くださいました。いくつかのグループに分かれて、映画の感想のシェアリングをしていただきました。簡単な自己紹介を交えながら、自分だったらどうするか、というテーマや、もっとハプニングがあるかと思ったという声など、多様な観点からのお話が活発にされて、30分間の時間が短く感じられました。
毎回思うのですが、1つの映画について語りあうことで、こんな楽しいひとときが作り上げられるとは素晴らしいことですね。初めて会った方々による、文字通り「一期一会」の機会という貴重さ。見ず知らずの人たちと短くても価値ある時間を分かち合うのは、今回の映画のテーマとも重なります。これこそ、映画による「市民交流」だなあとしみじみ感じました。これからもシネマ&トークでお待ちしております。(塚田 恵)